みんなおはよう！ 私の愛称は「無職ちゃん」！

どうして無職ちゃんって呼ばれてるかは……色々察してね！ （※ヒント:平日の正午）

朝食を終えてからはいつものように暇だから、運動がてら今日も電子の海を泳ごうと思ったんだけど……、

たまには変わったこともしてみたいと思って、あるものを用意してきたんだ！

じゃーん！ なんと魔道書！

なんでも古くから伝わる魔道書で、呪文だとかなんとかが載ってて、読むと危険だとかなんとか……。

ええっと、他にもいろいろ魔法陣の本とかも買ってきたよ〜

全部揃えるのに苦労してさ〜、え？お金はって？

……気を取り直して、今回の計画を発表するよ！

今回は！ 「魔法使いになって、なにかを召喚する計画」！

〜〜〜数時間後〜〜〜

ふ、ふ、ふ……。もう私の頭の中には、もう完全に、ばっちりと、いろんな魔法の知識が取り込まれたのだ……。多分。

できればドラゴンがほしいけど、ただでさえ狭い部屋がさらに狭くなるからチワワくらいのサイズで……、

最悪でもスライム……いや、そもそも……、

なんて、考えていても仕方ない！こういうのはやってみるに限るよね！？

必要な道具は揃えたし、あとは描いてみるだけ、簡単だよっ

え〜っと、まずは円を描いて……。な、なんかぐにゃっとしてる？

とにかく、ここをこうで、こうして……。あれ？ こうかな？ あれれ〜？

ん〜、まあこれでよし！ ちょっとずれてるのなんて気にしない気にしない！

じゃあ用意した魔法使いの服に着替えて、手を合わせて……。

！？

次の瞬間、魔法陣が輝き出して……！

ま、眩し——っ！

…あれ、なんか見覚えのない景色が出てきたけど。

これ、鉄の床だよね？

というか良く聞く魔法とかのファンタジーって景色じゃないね。

どっちかって言うと“えすえふ”？

うん。　思ってたのと違う！

それになんか怖そうじゃない？

ってことで送り返すね。えーとやり方は確か…

！？　あれ、なんで魔道書が動くの？なんでシーツがなびいてるの？

なんで魔法陣がまた光ってるの！？

…

‥‥‥

もしかして？

もしかして吸い込まれるの？

え、吸い込まれる！？

待って、捕まるもの…

ベッド！　…は反対側だし

机！　　　…はつかめないし

椅子！　　…も遠いし

魔道書！　…いけるかも！

よし！捕まえた…って嘘、止まらないんだけど！

待って！私まだ逝きたくない！

降ろして！今すぐ降ろして！連続ログインボーナス切らしたくない！

あーれー、たーすーけーてー‥‥

………

…後から考えたんだけど、抵抗するために魔道書掴むのは意味なかったよね？

～～～～～～

『警告、襲撃者あり。警告、襲撃者あり。空戦班は格納庫へ向かえ。繰り返す…』

緊急放送が鳴り響くなか、男達は急いでいた。

「っそぉ、またゲリラかよ！いい加減降伏を認めてりゃ…」

「といいながら先輩は楽しいって思ってるんでしょ？わっからねぇー」

「黙れ、無駄口を叩くな！ったく緊張感の欠片も無い…」

苛立った風の声を上げながら、新人の後輩の手を引っ張って格納庫へ走る。

「ッハァ、ハァ、Ｆ２５、２６…３１か。よし、ここで間違いないな。」

機体番号を確認し、慣れた動作で手早くパイロット認証をこなすと

「あのー、すみませー」

「少しは緊張感を持て！ほら行くぞ！」

「っうぇぇえ！わた」

「いいから腹を括れ！」

「ちょ！？え…えぇ…」

いつになく気の抜けた声に本当にイライラしながらいつも通り後輩を引っ張って行き、彼に最後の確認をとるために声を掛け

「着いたぞ！いつもやってるから、手順は分か…誰だオマエ？」

「いや、そもそもここがどこなんですか！？」

ひどく場違いな明るい後輩はいつの間にかひどく場違いな魔法使いのコスプレをした女にすり替わっていた。

ついでになんだその本は。

「まぁいい。後ろに座っとけ。くれぐれも許可なく装置には触るなよ？連れてきちまった以上置いていくわけにはいかん。」

まぁいい。訳の分からん女でも役には立つだろう。

「遅れて申し訳ない。Ｆ３１、クラッシュ機、発進準備整った！」

あ、クラッシュって名前なんだ。じゃなくて。

『了解、ハッチを開ける。各機発進せよ！』

…

…うん。どうしよう

ものすごく映画でしか見たことのない所に私は居ます…っぅわぁ！

…うん、船を出たんだね。びっくりした、内蔵が背中から突き抜けるかと思った…

「女、聞いてるか？シールド装置の制御権を渡した。攻撃を受けそうになったらボタンを押して張れ。但し、死にたくなければ展開と解除の切り替えには３秒待て。」

「え、どこで」

「…右のレバーの人差し指だ。繰り返すが死にたくなければ展開と解除の切り替えには３秒待て。」

あぁ、これのこと…

「チッ、死にたく！なければ！展開と！解除！切り替え！３秒待て！何度も言わすな！」

「…ゴメンナサイ。」

…これ、押してる間シールドが開く方式だったのね。びっくりしたぁ…

うん。大人しくしとこ。今のうちに持ってきた魔道書でも読もうかな？

実際召喚できたし飛んできちゃったんだしね。

上手く使えれば強みになるでしょ？

まぁ、この宇宙？うん、宇宙の中で使え…

「ひゃあ！？」

「っと側面攻撃を見逃してたか。悪い、助かった」

…死にたくないからシールド装置に徹しよう。

うん、なにより私の寿命が持たないし…

…あれ？あれなに？

戦闘中に話しかけるのはダメなんだろうけど、気になるから

「ゴメン、クラッシュさん？質問していいかな」

「手短に頼む。」

「あの、アンドロイド？も私たちの仲間？」

「ハァ！？そいつは初耳だ…」

ちょっと揺れた！え？普通じゃないの？

普通に私たちに加勢してたんだけど。

「人型機？応答せよ！」

先輩さんが無線で連絡を試してるっぽい。

…あ、手を振った。

「我々の味方か？返答頼む」

今度はしきりにグーサインしたりエイエイオーしたりしてる。

分からないから身振りだけ内線で説明してみたよ。

「あーそうか…後で話がある。同行願えるか？」

あ、固まった。

えーと肘と顎に手を当てて、上を向く仕草をして、

…逃げた！っていつの間にか戦闘終わってるっぽいし。

そりゃそうか。船を出て大分経ったもん。じゃなくて今はアンドロイドを…

あー、私たちが出てきた戦艦っぽいものの陰に隠れて

「…そうか。仕方ない、帰還しよう。」

あ、そうなのね。

ふぅー、つ・か・れ・たー…

降りたらゆっくり休も。

って考えてたんだけど。

「で、ファーリー。見ず知らずの女に自分の仕事を擦り付けてどこ行ってたのかな？…正直に吐け。」

帰りたい…立ち去りたい…怖いよぉ…

あ、説明するね。この状況直視したくないから。

実は私が座ってた席って本来彼の後輩のファーリーさんが座る筈だったんだよね。

そのファーリーさんがクラッシュさんに怒られてるんだけど、

途中でどっか行っちゃったんだよね。そこに運悪く？私が来てそのままああなったってわけ。

というか声が低くて余計リアルなんだけど…

ねぇ、圧が強くなっていってない？

「ッサマォァ！」　パァン！‥ゴン！

ひぃ！よりにもよってグー…

後輩の方、結構吹っ飛んでいったけど…

クラッシュさん、もう少し手かげんしても…

「ファーリー！女の面倒はちゃんと見とけよ！ったく…」

…終わった？終わったよね？

「ということになったからよろしく。じゃあ、ついてきて。」

…………

………………

…ねぇ、この人の神経どうなってるの…

「おじゃましまーす。」

「っと、まぁその辺に座っとけ。」

うーん、娯楽が無い…といってもテーブルゲームとかは専用の部屋があるみたいだし個室でも何も楽しめないというわけじゃないよね。

でも、魔道書読み込むのもいいかも？っとどれどれ…

…

「なんでコート着てフード被ってるの？」

「いやー、船内って寒いじゃん？うん。」

「そこまで寒いかなぁ…」

…気にしなくてもいいかな。秘密かもしれないし。

っとそうだ！

「コーヒーか何か淹れましょうか？」

「おう、頼んだぜ！」

攻撃に使えるものも試すかもしれないからね。

何かあったらこれにせいにしちゃおっと。

（うーん、これなら使えそう？でもなー…）

（っかしこっちに仕掛けてくることになるのは流石に予想外だったな…が、準備は整ってるんだよな。フフ、次で…）

「…きろ、おい！」

うー、なにごと？

「武器はあるか？」

「まどーしょ。たぶんつかえる…」

うわぁ！鉄仮面！？　…って、あー！昨日のアンドロイド！？

「しまったな、充電してたら今度は出遅れ…あ」

あ、変身した。

しかも後輩の人だ。

「…黙っててくれる？おじさん、協力してほしいことがあれば言うから。」

「あ、うん。じゃあ、帰るの手伝ってほしいかな？…あ、でも」

「大丈夫だ。こう見えてその手の知識もバッチリよ。…互換性があれば、だが。」

ドォォォン…

「自衛出来るだけの準備を早く整えようか。か、護ろうか？」

「あ、はい。」

よし、魔道書を持って。　っひゃぁ！

「おい、そこの…って昨日のか！？」

「ファーリー、加勢します！…あ。」

うん。　乗組員にも見られちゃったね。

あー、もう後戻りできないやつだ。

「…ファーリー改め潜入者プラザム、加勢します！」

陽気っぽく言い直さなくても…

って呑気に出来ない状況なんだけどね！

ロボットが襲ってきてたっぽいし！

…「ぽい」じゃないね！現在進行形でヤバいし！

「まずはその物騒なレーザー銃を仕舞ってもらおうかな。」

そういうとプラザムって人の腕が光って…

うわ、ビリって来た！　あれ？撃ってこなくなった？

「って無人攻撃兵器かよお前！？」

あ、攻撃力は無いのねそれ。じゃあ今度は私が！

「フレア‥っはぁ！」

よし、命中！ってうわぁ！？

あちちちち…

「お嬢ちゃん、魔法の試し打ちは離れてからの方がいいぜ？あと20ページ後ろの魔法が今は有効じゃないかな。」

え？…本当だ。　

「誰だ！‥ぐふっ」

「ハイ、おやすみなさい。」

「クソッ。メーデーメー…」

「ナックル！」

「！？　何だ…」

「っと、こいつで潜入してきたって訳か。なるほど？」

うーん、人に向けて撃つのは抵抗あるなぁ…

あ、ナックルも魔道書に載ってる歴とした魔法だよ？

物理じゃないからね？

まぁ、プラザムさんが大体やってくれたけどね。

あの人、腕がスタンガン代わりにになるのが大きいね。

「よし、乗り込んだな？よーし、出発！」

いや、敵の船だよ！？…あ、問題ないのかな？

「じゃ、本拠地乗り込みますか！っと、オートパイロットあるじゃん？ラッキー…」

「ちょっと！味方から狙われてるんだけど！」

「大丈夫だろ。まともにくらっても動けなくなる程度で済むから。」

いやそれ大丈夫じゃないよね！？ちょっと！？

『…シュ、すぐに止まれ！』

「先輩、無理です！」

ちょっとぉ！？…って、え？先輩！？

『…あ、あー。一応漏れない範囲に居るから聞くが、本当の名前はプラザムで合ってるよな？』

「はい、そうです。ってことは作戦、飲み込んでもらえました？」

『俺に黙ってたとはいえ、愛機の修理を手伝ってもらった礼として付き合ってやる…勝手に借りた金は別だがな。』

「それについてはたっぷりと利子付けとくんで。」

『いや、そこま』　ブツッ

あ、切った。というかそういう作戦だったのね。心臓に悪いことするなぁ…

「あ、そうだ。突入前にこれを渡しておく。」

そう言って渡されたのは着替えとボタンのついた取っ手。

「あの、これって？」

「寝てる間に魔導書を読ませてもらってね。理屈上、服の内側に術式仕込むことも出来そうだからやった。魔法世界行くとたまに見かける知恵だからな。

あと、その取っ手はこっちの技術の盾だ。ボタンを押すと盾が展開される。まぁ、レーザー兵器は受け流すようにして使わないと隙が出来るぜ。」

親切にありがとうございま

「さてと、トイレ行ってくる」

…えーと、プラザムさんってアンドロイドだからトイレ行く必要ないですよね？

それとも必要なの？

…うん、考えても仕方ないね。妙にサイズ同じなのが気になるけど…あと、これをいつ用意したのかな。

うーん、こうなるのは予想してなかったけど…いいんじゃないかな、楽しいし！

暫くして、これから乗り込むであろう基地が見えてくる。

「数年前、帝国による大きな侵略騒ぎがあってな。結果は帝国の失敗、企てた軍人が追放処分となった。私闘を禁止する条約に不満を持つ連中を利用しての企みだから基本的に倒してしまって構わない。首謀の事情は別だが、そいつは俺がやる。良いな？」

「うん、わかった。」

「…因みに俺の先輩のクラッシュはその事件で戦果を挙げて一挙に昇進したエース中のエースらしい。簡単には落ちないぜ。」

へぇー、そうなんだ。

「よし、そろそろ着くな。…確認してると思うが、そいつにはステルスと一応防御魔法を仕込んどいたから」

「うん、わかった。」

よし、作戦開始！

「おう、ご苦労だったな。もう安心…誰だ！？」

「敵だ！」

「‥撃て！排除しろ！」

まぁ、そうよね。でもこっちは！

「焼き払え、ファイア！」

うわぁ、本当に燃えてる…罪悪感…

と思ったら熱に強い装備みたい。

って撃ってきた！？盾を使わないと！

…プラザムさんが武器を壊してくれて何とか助かったみたい。

何を使ったら良いか、援護してくれるうちに確かめとこ。

途中でプラザムさんと別れてから結構進んだね。

毎回ちょっとだけ手こずっているんだけど、むしろ戦いたいっていうのが伝わるからちょっとだけ気楽かな。

それか麻痺しちゃってるのかも。

「…お前か、手下をかわいがってくれたのは。」

え？…きゃあ！？

「光学盾、か。防いだところを見る辺り反応は良いようだ。どこの人間だ？」

「…たぶん、知らないと思う。」

「ほぉ…まぁ、後で調べればわかることだ。」

なんか、今までの兵士の人より雰囲気が違う。と思ったら、

バツン！

「盾が！」

「フン、所詮は女か。どういう兵器かは知らないが、利用させてもらう。渡せ！」

「絶対にやだ！　っはぁ！」

思い返したら絶対得策じゃなかったけど、戦闘かいし！

結構、使ってる武器が厄介でしかも上手く避けるし。

でも、隠し玉があるのよね。使ったことないってだけだけど。

お願いします、私の想像通りでいてください。

「サンダー！」　バチッ

「ぐぁぁ！？ッソガキがぁ！」

うーん思ったより弱かったかなぁ。

ちょっとしんどいかも。このままじゃ

ヒュゥゥゥ…スパァン！

「グハァ！？誰だ！」

「はい、ターゲットの位置を間違えたポンコツマシーンでございます。」

プラザムさん！助かった！って感動してる場合じゃないね。えーとえーと…

「ならポンコツはポンコツらしく…くそ、どこ行きやがった！」

プラザムさんに気を取られたのが悪いのよね、なんて！…あった、これなら

「はぁ！」　バシャーン！！

「っしナイスだ！…えーと？」

そういえば名乗ってなかったっけ。

「まあいいや。気絶してるし結果オーライだな。お疲れ。あとは軍に任せて撤収しよう」

あれから私たちは無事元の船に戻ってきて。で、今は

「プラザム、だったか。お前の目的はこれで達成となるわけか。」

「はい。まぁ、厳密に言うならまだなんですがこの世界で達成できそうには無いんでまた別のところに行きますよ。お世話になりました。」

「そうか。そしてお嬢ちゃん、大変な事に巻き込んじまったな。」

「いえ、楽しかったので大丈夫です。」

「お、結構肝っ玉あるじゃん？」

プラザムさんに言われたくは無いけどね。

「で、俺は魔法とやらに詳しくないんだが本当に大丈夫なのか？」

「あぁ。彼女の“魔道書”とやらを調べたら簡単だったよ。」

あ、そうなんですか。まぁ、用意してくれたから本当にそうなのかも。

…私が用意できたんだからプラザムさんなら、だよね。

「じゃあ、使いな。」

「あのー、プラザムさん…踏んでます」

「本当だ！？っと失礼。これで良いか？」

ったく、本当にドジだったりするらしいからこの人は…

それはともかくとして。じゃあ、始めるね。

まずは手を合わせて……。

！？

次の瞬間、魔法陣が輝き出して……！

ま、眩し——っ！

「っと、これは部屋か？」

「…うん、私の部屋だよ」

「じゃあ、成功になるのか。っと離れないとまずいんじゃないか？」

「だな。嬢ちゃん、暫くこの部屋を離れるぜ。またな！」

「うん、ありがとー。二人とも元気で…」

二人が出て行った直後、魔法陣が再び輝きだして、あの時のように吸い込まれて…！

…戻ってこれたんだよね？

壁、ベッド、パソコン…やった！いつもの私の部屋だ！

と、その前に魔法陣は消しとこ。…よし、大丈夫だね。

うん、うん。あーそうそう、壁叩いたらこんな音だっけ。

もう一つ、いいよね。よし、ダーイブ！

わーい、いつものフカフカベッドだー！

「ちょっと、何騒がしくしてんの？」

お、お母さん？

って時間見て驚いたけどそんなに時間経ってなかったの！？

いや、それどころじゃないね。

今部屋に入れるのはかなりまず

「大丈夫？ 入るよー？」

「あ、い、今は──」

遅かった。もう私の姿は母親の目にくっきりと映り込んでしまった。

「な、何その格好！？ 魔女っ子にでも目覚めたのあんた……？」

「い、いやこれはそういうことじゃなくて、そのだから違うんだって！

そういう目をしないでも解決する方法がどこかにあるはずだからその」

「だいじょーぶ、中々似合ってるわ！

だけど今日は……家族会議ね」

だ、だから……違うんだってばぁーーーー！！！！

☆ふぃん☆