このシリーズを立ち上げ、その始まりとして「オーク」という種族に触れてきた。強さに対する向上心から人間と関わりを持ち初めた彼らとの交流は、その地を支える産業を産み出したと言われる。今回はそれに関する話を取り上げていこうと思う。この話はその初回と同じく出稼ぎ人が多く来る要塞の街「ノシス」の人気ある酒場で語れたものを取り上げている。
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よし、ノシスまでの長旅お疲れさん!ハハハ。まぁ俺はただの常連で地元じゃないが、マガシアからわざわざ来てくれてありがとな。
聞くにお前、生活の小銭稼ぎに闘士のサポートやってるそうじゃないか。
普通に生活してたらダチ関係でもない限りやることでもない仕事だからな、路上かそれに匹敵するくらいの生活なんだろうけどな。
俺?参加する側だよ、意外だろ?と、そういえばゆっくりできる機会に俺たちが参加する大会について教えるという約束だったな。
知ってる限りでよければ話すぜ。といっても知り合いの学者の受け売りも混ぜるけどな。
ここノシスは仲の悪い頃からオーク族と付き合ってきた歴史があってな、元々ここの闘技はオーク側の文化が輸入されてできたって話よ。
まぁ、交流した文化を輸入して有名になってるものは珍しくない話だ。
それが戦文化だっただけの話よ。
まぁ、元々オークが人間にちょっかいを出してきた理由が別次元の強さを手に入れるためだ。
交流ができる前も人間の戦士を捕えては決闘に参加させてたって話らしい。
聞けば奴らは強さが正義だから人間族でも強ければそれなりの立場は保証されてたって噂だ。
だからこそ、噂を聞きつけてその立場目当てで捕まりに行く狂者(クレイジー)もいたらしい。
それも終戦協定が結ばれた際に決闘を国がサポートする体制が生まれ、オーク族はそこで十分に戦いを堪能できるようになった訳だ
。正式な場所として今の闘技場が設立されたこともそうだが、何より負けた戦士を復活させることにこちらの技術が使われたことが彼らにとっては有難かった。
というのも強靭なオークとの戦いの中で回復・医療技術も発達したからな。
その代わりに防衛においてオーク族の戦士が参加することで交換条件となったらしい。
…オークの戦士にとってメリットが多すぎる気がするのは気のせいか?まぁ、続けよう。
そうしてオークなりの戦いの文化が浸透し、娯楽として楽しまれるようになると勝敗を予想しようとするものが現れる。
いわゆる「賭け」行為の出現だな。
長らく法の整備もないまま自由に行われてきた「賭け」だが、それを知った国が整備をしなければ風紀を乱すとして産業化に乗り出した。
トラブルが発生することもあったからな。生活に支障をきたしたものまで現れたという噂だ。
…てのは建前で、恐らく原因はドゥーマ教の視察隊が結成されたことだとも言われている。
第一引き合いに出されたトラブルは当時に限らず、賭け行為が行われてから長く言われてきたものらしいからな。
そうして国が変わっても闘技場は変わらず、その時の国と国民を潤してきた。
次に闘技場が変わったのはいわゆる混乱期ってのに丁度はいるあたりだな。
軍備の強化に伴って闘技場を改築し、部隊戦を新たに追加した。そして大きな武闘大会も開かれた。
これが今にも続く「ノシス旗争奪戦」だな。
理由は単純、自国の軍の強化を図るためだ。
これで鍛えられた戦士がマガス帝国の足を鈍らせた、とも言い伝えられている。
まぁ、こいつも混乱期後の戦力排斥運動に弾圧されたがな。
一時は闘技場を壊すことも考えらえたが、当時の運営スタッフが踊り子や歌い手を入れて存続させるに至った。
戦いが終わると入れ替わりで踊りとかが始まるのもその時の名残だとか。
まぁ、元々場所に縛られるもんでもなかった決闘も途絶えずにこっそり行われてたりもしたがな。
思えば裏へと身を潜めた決闘文化が再び表に顔を出すのは時間の問題だったのかもしれん。
世界情勢が安定した頃にエンターテイメントとしてノシス旗争奪戦を復活させようって声が上がってな。裏へと身を潜めていた決闘の関係者が秘密裏に闘技場へ招かれた。
ただ、かつてドゥーマの庇護があったという事実が復活を大いに後押しし、いつしか開催を期待されるまでになった。
その噂が瞬く間に広まって開催される頃には世界中から参加者が集まってたってわけよ。
そしてそれが続きに続いて今に至る、というわけさ。
さて、俺は明日に備えていろいろやることがあるのでね。そろそろ失礼するよ。
っと、せっかくだから明日観戦していけよ、それくらいしてもバチは当たらねぇぜ。