二次創作

賑やか街に根張る影

概ねの外見イメージとしては同シリーズの作品である「殺気」「パーカー女子」を想定して書いてみました。
表社会で騒がれている事件に、元知り合いである探偵の依頼を通じて首を突っ込んでいきます。
※漫才を繰り広げる場面あり

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名無しのナナ

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ここはとあるショッピングモール内にあるゲームセンター。

学校帰りの学生達がFPSの筐体に群がり、あれやこれやと野次を飛ばしつつ仲間のプレイを見守る。

「引っかかった…!」 ダァン、ダァン…

「っし、一位! 今回は相方が良かったな!」

そう言うとコントローラーを握っていた学生がヘッドホンを外すと後ろを振り向く。

「このゲーム自体はシロウトっぽかったけどな。キャラの強み全無視だったぜアレ」

「ちょっと誰だったか見に行かねーか?向かいの席だったろ?」

「お、いいね。じゃあ、本試合の功労者を直撃…」

そう言って相手を確認し、固まった。

「子…供?」

自分より身長低めの女の子が向かいの席から発つのを見たからである。

(あの年齢であのプレイ?マジか…)

そんな彼女はこちらに歩み寄ると

「ねぇ、アナタたちってよくこの場所に寄るの?」

そう聞いてきた。


(昨日までは来ていた、ね。…というか)

なんで殺し屋に人探しを、などと心の中で不満を漏らしつつ、ショッピングモールを歩き回る。

…一通りは回っただろうか。

「……」 ピッ、ガタァン…プシュッ

入り口に戻ってきたナナは、外の自販機で買ったコーラを開け、手帳を広げて考える。

(一件目、サキモトが2週間前。そして2日おきに4人ずつ…どれもこの街で…)

「やっぱり見つからなかったか。」

唐突に頭上から声がかかる。顔を上げてみれば

「あぁ、オキガタ。…なんでこんなのわざわざ私に?」

「聞けば情報収集も出来る範囲なら自前ですると聞いてね。」

「そんなこと聞いてない。」

「ハハ、悪かった。…この程度さ、表で来る依頼ってのは。」

不満たっぷりに文句を言うナナに、彼は笑ってそう受け流しながら隣に座る。そして

「だがな。今回の事件、犯人についての確信はあるが、裏付けが必要でね。

…最近の連続殺人、覚えてるか?」

「確か全員が探偵業とは。」

「…そして全員がまた、この事件を調べてる最中だったそうだ。」

「!!…つまり”裏“として動く可能性も?」

「そういうこと。で、俺側で動きがあった。さっき送ったメールの添付ファイルに詳しいことは書いてるから頼めるか?」

その言葉を聞きつつメールを確認した。そしてオキガタの方を向き

「頑張ってみる。」

力強く頷いた。


依頼人支給の慣れないメガネをかけ、添付された信号受信アプリを頼りに対象を追う。

と言えば聞こえはいいものの、現状アプリを逐一確認しながら歩き回っているだけである。

ふとナナはとある建物の入り口に目を向け、それから辺りを見回して

(あ、新作パフェ…)

目を付けた場所を見張れる位置に店を構えるスイーツ屋を見つけ、吸い込まれるように入っていった。


(うん、ここなら。)

買ったパフェをカメラで撮影したのちにスプーンを手に取りつつ、ナナは横目で見張りを始める。

大体の読みは当たっているのか、アプリの方も反応が消えることは無い。

小さくではあるが、確信が芽生える。

…そうしてかれこれパフェを3分の1まで食べたころ。

ピコン 「!!」

ふとアプリがひときわ大きな反応を示す。

そして外に目を向けてみれば、やや大きめのバンが。そして

(例の…やっぱりここで間違いない!)

それは注目した建物の駐車場へと入っていく。

やはりアプリと見比べていても、間違いはなさそうだ。

すかさず、しかし周りに悟られないようにその様子をカメラに収めると、ナナは依頼主にチャットを飛ばす。そして

ピコン 『お、ようやくアジトに到着したわけか。』

「予想通りだった。このあとは?」

『潜入できれば知りたい物が知れるんだが、流石に向こうも殺し屋を雇っているとなると危険だ。無理のない範囲で引き続き頼む。』

(…無理のない範囲、ね。)

そう呟きパフェを食べながら、彼女は『どう潜入するか』をすでに考えていた。


店を出て、良い糸口はないかと周辺を歩き回っていたところ。

ブォロロロ…キキィ 「…何?」

「何って、親父に向かってそれはないだろう? せっかく迎えに…」

ガチャ、バタン 「はい、発進。」 「…ったく、ちょっとは演技しろよ」

…もちろん、”親父”というのはその場の嘘である。

「…オキガタ、何か進展でも?」

「奴らの繋がりを暴く方法を思いついた。が、そろそろ発信機もバレてるだろうと思ってな」

「準備を整えて乗り込むだけ…では駄目?」

シートベルトを締めながら訊く。

「折角足洗ったんだ、俺は助けねぇぞ? …っていうときに目薬使うやつが三流よ」

その言葉に、仕方なさそうな様子で目薬をしまう。

「まぁ、この件に首突っ込んだ以上はそうも言ってられねぇ。保険を託そうかと思ってな。そのための資料を…」

そう話を続ける彼は恐らく気付いてない。それは…

「伏せて!」 ガシャァン キュゥッ、キュウン…

バックミラーに映る黒塗りの数台。その奥、銃口が一瞬見えたのだ。

運転席の視界を窓ガラスのヒビが遮っている。

「この車は頃合いを見て捨てる。 とにかく、この資料は持っとけ!」

そう宣言するとアクセルを踏み込んでハンドルを切る。自然、

ッキキキィィ 「わっ!?」 「…しがみついてろッ」

そう叫び、ドリフトを交えて追っ手を撒こうとするが

「っそぉ、奴らも伊達じゃねぇ!」

「なら、まっすぐ走って。」 「おい、何を…」

そう言い、困惑する彼を無視して懐の拳銃を取り出すと後ろを再び覗く。

彼女が何をするのか、オキガタもバックミラー越しに察したのだろう

「取り敢えず次の交差点曲がるぞ! そっからはカーブが続く!」

「わかった…」 (…あそこ!)

狙い先、そして彼が辿ろうとする進路を順番に確認すると拳銃を構え…

パァァン…キュゥッ、ギィギィギィァァァ ガシャァン

一台が車線を外れてガードレールに。それを確認するや二台目の窓から銃口が。

パァァン、キュゥッ 『ぐわぁっ』 ガンッ、カッ…

すかさず拳銃を打ち込む。

「…お見事。だが」

「まだ気は抜けない。」

彼らは依然として追跡を続けようとする。

「こっから落としちゃ流石にマズくねぇか?」

「…手はある。」 パァァン…キキィィ、ガッ

着弾音こそ聞こえなかったものの、車はコントロールを失い道をふさぐように止まった。

「…どこ撃った?」

「空砲。向こうが勝手に自滅しただけ。」

「相変わらずだよ…ともかく、一旦は凌いだな。」

こうなれば、例え後続がいようとも撒くには十分のはず。

しかし、ここまで来て他の不安がよぎる。

そういえば確かこの辺りではモツダのなんとやらが警察に配備されるはずだ。

そして、今日からその試験運用で街全体を周るのだったか。

なんてことを二人して思い出し、ミラー越しに顔を見合わせて

「…もう少し走ろうか。」 「うん、お願い。」


フロントガラスの無い車を置いて、二人は日の暮れた街を歩く。

…一応、ナナは青いパーカーを着て帽子を前のポケットに仕舞っている。

「…で、本当にこれも受けてくれるのか?」

「探偵業の立ち上げ祝いに手伝ってるだけ。それに報酬も…」

そう言って小さな紙きれをオキガタに手渡す。

「…これ、任務中に食ったスイーツか? チマチマとケチくせぇ真似するくらいならちゃんと受け取れ! おい…ったく」

文句を言うも、当の彼女はすました仕草で耳にイヤホンを突っ込む。

オキガタは仕方無さそうに頭を掻くともう一度彼女の方を向き、

「ただ、算段は出来てるんだろうな?」

真面目に取り繕ってそう訊く。

彼女から返ってきたは静かなグッドサイン一つであった。


とある暗い一室。その青年は苛々していた。

ドン 「っそぉ、アイツら しくじりやがって!」

「どうしよう、足が付いたらおしまいだよ…イデェ」

不安そうに青年に訊く男を、思いっきり殴ると

「ケータイの分解も碌に出来ねぇで何を言ってやがる! …ハッ、なんなら今から」

スチャ 「死ぬ?」 「!!」

青年の頭に突きつけられた拳銃、無表情で言葉を引き継ぐ橙帽の少女。

「誰だ、お前…は…」

「探偵助手、と言っても無理? 大丈夫、自己紹介は結構だから…」

そう言い、この場にいる彼らの名前を一人ずつ言い当てていく

「おまっ…なんでそれが殺し屋風情に!」

「探偵助手といったはず。」

そう言い、橙帽の少女こと“名無しのナナ”は、イヤホンが付けられた耳を指さす。

「あと、監視カメラ付けてるでしょ? …」


オキガタは自分の事務所に居た。

ハッキングしたカメラの映像には、ナナと対峙する男たちが映っている。

「アイツ、俺が最悪携帯一つで事足りるのをいいことにペラペラと…」

…ナナに情報を送っているのが、実は彼であった。が、

ドンドンドン! 「…嗅ぎ付けられたか。仕事早いよね…」 ダァン

扉を破り、武装した男たちがオキガタの事務所に乱入する。

それと同時にオキガタは悠々と立ち上がり

「まぁ、こうなれば正当防衛だよな!」

ニヤリと笑う


「…そうかい。ただ、残念だったな。その協力者とやらも今から始末する。大人しく雇い主のもとについていればいいものをさ?」

青年がそう言うと、金属バットやらを持った若者たちがぞろぞろと部屋になだれ込む。

ナナは銃を持っていた手を下げると、黙って青年から離れ…

「…待て、よりにもよってそいつ殺し屋のナナじゃ…」 「…遅い!」 ババッ

素早く青年たちの懐に潜り込むと、両手に持ったスタンガンを二人同時に捻じ込む。

「!…っが一気に攻め」ブォォン 「うわぁぁっ」

それを見た他の若者たちは躊躇なくナナに襲い掛かる。

それを時に鉄パイプを通じて電流を流し、時に空いた鳩尾を蹴りぬいてナナは一人ずつ確実に無力化していく。

そして一通り若者の刺客を地に伏せると、ナナは青年の方を向いた。

…集めた仲間が全員やられるとは思ってなかったのか、彼は怯えた様子を見せる。

「…動かないで。」スチャッ 「ヒィィッ」

再び銃に持ち替え、彼に銃口を向けながら彼の背後に回り込むと何か作業を始め…

「あとは"クラック屋"に報告…」

そう言い残し、ナナは姿を消した。

彼の耳にパトカーのサイレンが聞こえたのは、それからしばらくしてのことである。


「『誘拐犯グループの本拠地判明。怒りを買い襲撃か』…だからお前なぁ」

地方紙一面のタイトルを見たオキガタが新聞を置くと、携帯をいじりながらソファに寝転がってくつろぐ少女の姿がそこにあった。

「口出さなきゃ穏便に済んだだろ?」

そう文句を言うと、彼女はコードを引っ張ってイヤホンを耳から抜いて

「子供は風の子。」

当たり前のようにそう答える。

「ンのガキ…お?」

ナナに文句を言おうとしたその時、事務所の扉がノックされた。

ナナが座りなおすと同時に依頼人であろう女性が事務所に入る。

「すみません、オキガタ探偵事務所って今は…」

「はい、営業中ですよ! あ、この子はバイトね。」

その言葉に思わずナナはオキガタを睨む。

(勝手に決めないで)

(居る方が悪い。というか大人を舐める方が悪い。)

そんな会話を目で交わしつつ、諦めたようにベルトを外した橙色の帽子を被ると

「ここ座って。話は聞くから。」

そう言って女性を向かいのソファへと促した。

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