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『魔法少女翔〜心配!後編 二次創作小説〜』



「1」


〜中心街 上空〜


俺の名前は風穴 翔(かざあな かける)…!

…………ごめん。今は自己紹介をしてる余裕がない…かな。


実は妹の天空(そら)が昨日の昼からずっと行方不明なんだ。

原因はおそらく……俺だ。

俺が天空の大切にとっておいたケーキを食べた事がバレて、怒らせてしまったからだ。そうに違いない。


今朝から俺は魔法少女に変身して上空から必死になって探している……んだけど全然見つからない。

いいんちょーの妹の紅葉ちゃんが教えてくれた「ラピア」もくまなく探したけど……天空はいなかった。


時間を見ると、すでに12時を過ぎていた。


「うっ………そろそろアジトに行かなきゃいけない時間だ。」


まだ探したい気持ちが強いが…仕方なく捜索を中断する翔。



「ほーこくが終わったら…凛さん達に相談しよう。」



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〜数十分後 魔法少女アジト〜



「それじゃあ〜!いつもの「状況報告」いってみよ〜!」

「何故おヌシが仕切るんじゃ変態娘。」

「いいから座れ。若菜。」

「馬鹿菜。シットダウン。」

「………………。」

「みんなが冷たいよぉぉウォォン!!!」


いつものように「翔・凛・若菜・千紗」4人の魔法少女と自称マスコットの「うみねこ」で魔法少女会議が始まる。

ムードメーカー若菜の泣き芸をよそに、凛が口を開き始める。


「では私からだな。西地区は今のところ下級魔獣しか出現していない。おそらく新たに生まれた魔獣共だろう。問題なく一蹴した。」

「え…?確か数十匹が一気に大量発生したって聞きましたけど「一蹴」ですか?キャプテン?」

「あぁ。あの日は生徒会の仕事がまだ残っていたのでな。時間短縮でつい本気を……。」

「「「………………………。」」」


生唾を飲み込む一同。

全員心に誓ったのは「凛(姉・さん・キャプテン)に逆らうのは絶対止めよう…!こ○される…!」だった。


「ちさちさは〜?」

「問題なし。以上。(スマホを弄りながら)」

「報告早っ!一応さ〜どんな敵と戦ったの?」

「ザコ。見ての通り無事よ。町も以上なし。はい、お終い。」

「クールな報告も……可愛いよ、ちさちさ。(若菜、無理矢理なイケボ)」

「○ね。馬鹿菜。」

「ナチュラルな暴言!」


一見やる気がないように見えるが、千紗は本当に何かあった時は真剣な顔で率先して話をするのでそれを知っている翔たちは何も言わない。


「じゃあ翔は〜?」

「あ…俺は………後ででいいや。先に若菜からでいいよ?」

「ん?」

「あら。」

「およ?そう?じゃあ私の地区はね〜……よいしょっと!」


ソファーから立ち上がる若菜。


「今週は!魔獣に襲われてた小学生兄妹を助けちゃいました!」

「…!(ピクっ)」

「兄妹だと?子供が襲われていたのか。」

「いやぁ〜それがその兄妹。翔と翔の妹ちゃんによく似てて!お兄ちゃんが頑張って妹を守ってたのですよ。」

「だったら見てないで早く助けなさいよ馬鹿菜。」

「だから助けたよ〜!妹ちゃん泣いてたし。子供の涙は……放っておけねぇぜ!ってね!」

「出来れば子供じゃなくても早めに助けて欲しいんじゃがのぉ…」


いきいきと話す若菜。

だがそれを聞いて翔が……。


「……いも…うと。」

「ん?そうだよ翔。確か翔にも妹がいたよねー?」

「………グスッ。」

「へ?」

「そ……天空………天空ぁ〜!」


行方不明になった天空を思い出して、ついに泣いてしまった翔!


「えぇぇ!?ど・どしたの翔!?何で泣く!?」

「わ・若菜………貴様ぁぁぁ!!!翔に…翔に何をしたぁぁぁぁ!!!???」

「ヒィッ!?知らないっすキャプテン!!!」

「お・落ち着いて凛姉!!??」


急に泣き出した翔に驚く魔法少女一同であった。



「2」


〜今なおアジト〜


「「「天空ちゃんが…行方不明?」」」

「…うん。」


事情を魔法少女の皆に話した翔。

話しているうちに何とか落ち着いて泣き止んだ。


「グスッ……そりゃ心配やなぁ〜翔!あんな可愛い妹が…若菜お姉ちゃんも心配だぁぁぁ!」

「アンタまだ会ったこと無いでしょう…。」


「♪〜♪〜(着信音)」

「???」


急にスマホから着信音が鳴り出す。

スマホの持ち主は………凛だった。


「すまない、私だ。少し席を外す。」

「了解っすキャプテン。」


スマホを持ちながら外へ出る凛。

次に千紗が屈んで翔と目線を合わせながら話を聞く。


「それで翔?他に妹さんが1人で行きそうな所はあるの?」

「服屋さんとか……お菓子も好きだからお菓子屋さんとか…かな?でも全部あるラピアに居なかったし…。」

「そう。時間の経過から考えても…最悪、誘拐されてる可能性も…あるわね。」

「誘拐!?」


ジャスコで魔人に誘拐されてしまったことを思い出してしまう翔。(第15話 H.I.A参照)

それが今度は天空に…!


「は・早く天空を見つけなきゃ!(シュン!)」

「ちょいちょい翔!いきなり変身しないで〜まずは落ち着きなって!闇雲に探しても厳しいよ?」

「でも…!」

「ここはさ…お嬢様の出番じゃない?ちさちさ。」

「は?」

「ちさちさ、執事さん雇ってるくらいだし?SPみたいなのに指示を出してさ〜、大勢で町を捜索とか出来ない?」

「あんたねぇ〜……そんな漫画みたいな事……出来なくは……ない……けど色々と……」

「出来るんかぁい。」


手に顎をのせて悩む千紗。

それを見て翔の後ろに回りこみ、耳元に話しかける若菜。


「翔、ここは妹のためだと思って。「探してください…千紗お姉ちゃん…!」って言うしかないよ〜?」

「えぇ〜………何で俺が……。」

「涙目で上目遣い。そして人差し指を唇に添える。コレでちさちさもイチコロのはずだよ〜?」

「………分かったよ。」


魔法少女姿のまま千紗に近づく翔。

それに気付かない千紗。


「………ゴメンなさい翔。やっぱり私の力じゃそこまでは……。」

「グスッ……探して……ください。千紗お姉ちゃん…!」

「………………………っあ。」


あまりの可愛さに数秒間、放心状態の千紗。

そして!


「まっっっっっかせなさい翔!!!」


スマホを取り出して操作しまくる千紗。

それを見てハイタッチする翔と若菜だった。


そしてそのタイミングで凛が帰ってきた。


「……私が出ている間に何があったのだ?」

「あ!キャプテンおかえりなさ〜い!ちさちさが翔の妹探しに全力で協力する事になりました〜!」

「そう…か。……翔!」

「な・何?凛さん。」

「私たちも天空ちゃんを探すのを手伝おう。お前は早く東の海岸沿いを飛んで探しに行くといい。」

「え?海岸沿いを?」


凛の急な提案に驚く翔・若菜・千紗。

そのまま凛は続ける。


「あぁ。前に天空ちゃんと会った時に「種差海岸にも遊びに行きたい」と言っていたからな。おそらくそこまで行ってるんじゃないか?」

「ホント!?」

「あくまで私の予想…だがな。今日はもう魔法少女の集会は終わりでいい。早く行くんだ翔。」

「凛さん……みんな……ありがとう!」


翔はそのままアジトを出て空へ飛んで行ってしまった…。



「それなら私も、じいやとSP達に北と南…そして西の町への捜索を…!」

「いや。待つんだ千紗。」


スマホを操作する千紗の手を掴む凛。


「え?どうしたの凛姉!?」

「どうしたんすかキャプテン!?ホントに翔の妹ちゃんが誘拐されてたらマズイですよ!?」

「ゆ・誘拐?大丈夫だ。その心配はない。」

「ほぅ、なぜそう言い切れるんじゃ?凛よ。」


全員の視線が凛に集中する。


「はぁ………実はさっきな……。」



「3」


〜時間は経ち 夕方 風穴家の近く〜


「……………何処だよ……天空。」


翔は魔法少女の変身を解除して落ち込みながら帰り道を歩く。



アジトを出た後もずっと海岸沿いを飛んで探し回ったが天空は居なかった。

「私に似ている女の子見かけませんでしたか?」と応援してくれるファンのおじさん達や子供達に聞き回ったりもしたが……何も成果は得られず。

気付けば「夕方」になってしまっていた。


「………いや、ダメだ。まだ…諦めちゃダメだ!ともかくお母さんに早く伝えなきゃ!急ごう!」


落ち込む気持ちを振り切って顔を上げ、家に向かって走る翔!


そして家に着く曲がり角を曲がったその時。

目に飛び込んで来たのは…!


「ハァハァハァ……………え?」

「あ、おかえり!お兄ちゃん!」


なんと!家の前に天空が立っていて翔を待っていた!

よく見ると上着の下にエプロンを付けている。

だがそんなことより。


「そ・天空………天空なのか?ホントに?」

「うん?そうだよ〜お兄ちゃん。もう『皆』待ちくたびれちゃっt…………ってうわっ!?」

「天空ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


勢いよく天空に抱きつく翔。

そして顔がグチャグチャになるほど泣きじゃくっている。


「お前ぇ〜……何処行ってたんだよぉ〜!?俺てっきり……グスッ……俺の時みたいに誘拐……されたのかもってぇぇぇ………。」

「あわわ…そ・そっか。ゴメンねお兄ちゃん。よしよ〜し。よしよ〜し。」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


結局、妹の胸で大号泣する翔。

予想以上に翔が泣くので困り顔の天空。

だが天空もギュッと翔を抱きしめ返す。


「私の事心配してくれたんだね。ありがとうお兄ちゃん。」

「ズズッ……当たり前…だろ!?俺は…グスッ…お兄ちゃんなんだからな!」

「そうだね。自慢のお姉ちゃんだよ!」

「え?……いや。俺はお兄ちゃん…だからな?」


(ガチャ)

玄関の扉が開く。


「あら翔。おかえりなさい。」

「お母さん!」

「寒かったでしょう?早く中に入りなさい。」

「う・うん。」


天空と手を繋ぎながら家の中に入る翔。

そしてリビングへの扉を開けると…!


(パン!パンパン!)


「うわっ!?」

「「「「翔〜!サプラ〜イズ!!!」」」」」


なんと!リビングにはクラスメイトのいいんちょーや隼人たちがクラッカーを持って待ち構えていた!

テーブルの上には沢山の食事が置かれている!!!


「え?え?サプライズ?今日って俺、誕生日じゃないよね???」

「違うよお兄ちゃん。今日はね……『私の作ったケーキ』を!お兄ちゃんに食べてもらう記念日なのです!」

「……………………………………………………は?」


困惑する翔。

そんな翔を見てニヤニヤが止まらない天空。


そしてついにネタバラシの時間がやってきた!



「4」


〜風穴家 リビング〜


「今までのが全部演技で………ケーキを作るための時間稼ぎ〜!?」

「うん!」


テーブルを囲むように皆がイスやソファーに座って、翔ママが準備してくれたディナーを楽しむ!


そして翔の隣に座った天空が今までの何をしてきたかを説明してくれていた。


「昨日の朝はわざと怒ったフリをしてね。茜ちゃん達の家に行くこーじつを作ったんだ〜。『ケーキ作りの練習』しに行くの、怪しまれないように。」

「泊まった友達の家って……いいんちょーの家だったのか。」

「そうよ。その日にスーパーで私と会ったじゃない?その時は私も事情を知らなかったのよ。」

「後から聞いてヒヤヒヤしたよ〜。何も言わないでくれてありがとう茜ちゃん!」


グータッチする天空といいんちょー。

マジか……という顔をしている翔。


「そして次の日はお兄ちゃんが私を探している間に、学校の皆に声をかけていたの。茜ちゃんの協力を得てね。」

「そうか……だからいいんちょーと隼人たちが集まっていたのか。」

「そうだぜ。翔のビックリした顔見たかったしな!」

「翔くんへのサプライズって聞いて。面白そうって思ったよ!」


隼人と優が食べながらニヤニヤと答える。


「お前ら〜。」

「急にあの場で翔が現れたのもビックリしたわよ。まぁでも紅葉の機転に救われたわね。」

「天空ちゃんのためだったけど…嘘付いてゴメンなさい。(ペコリ)」

「うっ……べ・別にもういいよ。」


ちゃんと謝る紅葉を見てポリポリ頭をかきながら許す翔。

そんな翔に天空が耳元で囁いた。


「ちなみな………凛さん達もだよ?」

「え…?」


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〜時を遡り アジトの外〜


スマホを持ってアジトの外に出た凛。

電話に出ようとする。


「非通知か……はい、もしもし。」

「あ、凛さん!こんばんわ!」

「その声、天空ちゃんか!?何故私の電話番号を…?というか翔が探していたぞ?」

「あ、もうお兄ちゃんと会ってます?でも間に合ってよかった〜。」

「???」

「え〜っとですね………」


(事情を説明する天空)


「くすっ…成る程。イジワルな子だな天空ちゃんは。翔のやつ、天空ちゃんを見つけられなくて泣いていたぞ?」

「ほ・ホントですか?困ったなぁ〜、まだケーキが出来上がるまで少し時間が掛かりそうで…。」

「ふむ。なら私がまた時間稼ぎをしておこう。だが、夕方までには何とかするんだぞ?」

「……はい!ありがとうございます!凛お姉ちゃん!」

「あぁ。ケーキ作り頑張るんだぞ。天空ちゃん。」


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「………というわけなんだ〜。(小声)」

「根回しが良すぎだろお前。」

「は〜い。みんな夕食は食べ切ったわね?じゃあ天空〜運ぶの手伝って〜。」

「あ、は〜いお母さん!」


キッチンへトテトテ走って向かう天空。

そしてお母さんと一緒に持ってきたのは…!


「うわぁ…!」

「はい、お兄ちゃん!天空特製のホールショートケーキだよ!」


テーブルにドンッ!と置かれる手作りのショートケーキ!

見た目はもうプロが作ったケーキそのものだ!


「本物のホールケーキだ!すげぇなぁ翔の妹…。」

「当然よ!作るの私も手伝ったんだから。まぁほとんど作ったのは天空ちゃんだけど…。」

「はい、お兄ちゃん。お兄ちゃんにはイチゴさん2つ乗っけてあげる!」


ケーキを一切れ貰う翔。

フォークを握って…。


「よ・ようは味だぜ味。………いただきます。」


パクリ!

さて、お味は………。


「どう?お兄ちゃん?」

「………………………美味い!!!(シュン!)」

「あっ!?」


あまりのケーキの美味しさに女の子に変身してしまう翔!!!

だが翔もすぐ気付き…!


「あっ。」

(シュン!)


一瞬で元に戻る!


「あら?今…髪の長い女の子がいたような…?」

「俺も。……ショーコちゃ……女の子が一瞬見えたような…?」

「わーっ!わーっ!どうしたんだよ皆〜!?それよりコレ美味いぞ〜?すごいな〜!?天空〜!?」

「そ・そそそうでしょ〜お兄ちゃん!?良かった〜!さぁさぁ皆も食べて〜!」


大量の冷や汗をかきながら何とか誤魔化す風穴姉妹であった。



「5」


〜その後 リビング〜


翔へのサプライズパーティーが終わり、いいんちょー達とはお別れ。

テーブルの上を片付けている翔ママと天空。


「お母さん。昨日と今日はホントにありがとう。たくさん手伝ってくれて。」

「いいのよ。可愛い娘のお願いだもの。……昨日から沢山動いたのでしょ?お手伝いはここまででいいから休みなさい?天空。」

「え?大丈夫だよ。それにお母さんだってお腹の赤ちゃん…。(第23話 創造妊娠 参照)」

「平気よ。まだ大きくなってない時だから。それとホラ。」

「ほぇ?」


翔ママの目線の先、リビングから近くの部屋で……翔がスヤスヤ寝ていた。


「翔も、天空を探すので疲れちゃったみたいね。」

「もぅ〜お兄ちゃん。部屋でちゃんと寝ないと風邪引いちゃうよ〜?」


翔の側まで寄ってくる天空。

身体をユサユサ動かすが起きない。


「天空ぁ………お兄ちゃんが……ついてる…ムニャムニャzzz」

「………ふふっ。うん。ありがとう、お兄ちゃん。………ふぁぁぁ〜。」


…………………

………………

……………

…………


「天空〜?翔起きたかしら……あらあら。」

「………すぅ〜。」


翔に覆いかぶさるように。

天空も疲れ果てて寝てしまいました。


お疲れ様、翔。天空。


終わり。



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「キャプテン〜!私たちも翔の妹ちゃんのケーキ食べたいっすよ〜!」

「また今度だ。千紗もすまないな。ギリギリSPの出動を止めてくれて。」

「凛姉がもうちょっと遅かったら黒服が町に大量発生してたかも。ふふふ!」

「ケーキかぁ〜……羨ましいのぉ。ワシも若い頃は…。」

「あの!?呼ばれたから来ましたけど、私が居ない間に翔くんに何かあったのですか!?くっ…風紀くん!過去映像出してください!」



おしまい

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