イタ電？　威力業務妨害罪です。（梔子）

自ら体を売る輩がこの程度の悪戯で傷つくわけもない。軽い気持ちで今週何回目かの電話を掛けてみる。普段は真面目に生きている自分の唯一の息抜きなのだから、これくらい許されるだろう。

「ねぇ君、パンツ何色？」

「また？　人に聞く前に自分が履いたら？」

これは手厳しい反応が来た。声から察するに、若い男のようだ。男娼というのは恥じらいがなくていけない。少女ならば初々しい反応をしてくれただろうに。残念に思っていると心底軽蔑した声が刺さる。

「奥さんと娘さんもいるのに、気持ち悪」

何故それを知って。ぞわり寒気の滲んだ私の背中側から、携帯電話を通さぬ声が聞こえた。

「リビングに写真があったもの。此処には飾ってないけれど」

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a pair of sex doll（ピエロの８）

昔、死んだカブトムシの電池を交換しようとする子供の話がありましたが、電源を入れてないのに人形が話しかけてきた、と助けを求めに来た子供になら会ったことがあります。いつもならそのお人形は、お父さんとお母さんが遊んでいる時にしか鳴らないそうなのです。怖がるその子に案内をしてもらい、現場を確認してきました。心配はありません、今では「二人とも」仲良しな姉と妹として生きておりますから。

実子を人形と偽って虐げていた畜生の雄と雌ですか？　大きなお友達に、大好きなお人形として引き取ってもらいました。今頃、運が良ければ新しい素材にリサイクルされているだろうし、悪ければ仲良く楽しく遊んでもらっているかと思います。

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彼岸の果実（目緋絲）

「おや、そちらの木の実は取らない方が良いな」

そう言って、別の木からもいでくれた木の実を差し出すのは、俺が住む逢真贋刻郷の大家さんだ。木の実の種類も熟し具合も同じようなものだと思うのだが、どうして此方の木の実は取ってはいけないのだろう。不思議に思って尋ねると、のんびりとした答えが返ってくる。

「山の獣でも取り難い位置の木の実だからな。貴方の身では、下の崖に落ちて怪我をしかねん」

成程、どうりで木自体が立派に見えた。美味しそうな果実に目をくらませた人間を崖に落とし、潰れて土に還った血肉を養分とする。そうしてより美味しそうに実った果実が、また人を惑わす。全く自然というものは強かで美しいものだ。

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背負う子包み（ダスト）

「なぁ、頼むからおろしてくれよ。お前の為でもあるんだよ」

いかにも遊び人風のちゃらついた格好の男が女の人に頼み込んでいる。嫌な現場を見てしまったと思ったのだが、女の人はどうしてかにこやかに笑っていた。何を考えているのだろうと勘繰っていると、工務店の皆が水分補給出来るようにペットボトル飲料を吟味していたスターがやってきて言う。

「おや、ピパピパですか。雄が子を背負わされるとは珍しい」

その時は言葉の意味が分からないままに、スターが選んで箱買いした飲み物を運ぶことに専念した。後で「ピパピパ」と単語を調べたらブラクラ画像だったんだが、スターには一体、あの男の姿がどんな風に見えていたんだろう。

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無垢なる残酷（注射男）

子供とは時に残酷な存在であります。確かに愚生は自分の領域内において、その場に存在する物を組み合わせて作った液薬を、愚生に注ぎ込んで攻撃することを良しとする規定を設けております。

けれどもポケットの中に何が入っているかを透視するほどの能力はないのであります。たとえば推測するだけの力があるとして、ポケットの中に入っているものなど、ハンカチーフかポケットティッシュか小銭か溶けた飴玉くらいのものだと思っておりました。

そんな愚生が自分の本体であるシリンジに、蟷螂の卵をぶち込まれると想定出来るわけがありましたでしょうか。

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見る者は見られる者（オターリア）

ある日、ＳＮＳのＤＭに、小さい子供が描いたような絵と「私を見つけて」のメッセージが送られてきた。好奇心で探してみれば、一枚目から順に次の絵が隠されているだろう場所のヒントを含んで、町中に散らばっていた。

そうそう難しい謎ときでもないので、時間にして3時間ほど。辿り着いた最後の紙に刻まれれるのは

「見つけた」

そうにやけた声を出した男達が、俺の姿を見て固まった。普段みるらちゃんと共に行動する俺のツイートを女の子のそれと勘違いしたんだろう。

皆も奇妙なＤＭにつられて人気のない場所に行かないようにな。

女の子を人気のない場所に誘導して襲おうとするような変態共の血を吸い尽くせる、俺のような化物でもない限り。