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梅雨日和の人々

【本日の天気 雨、時々黄梅】( https://x.com/9376Hatks/status/2061105121896120590 )に参加させて頂きます!
それぞれの地域を書き終わり次第追加していく形にしていこうと思います!
6月5日:鰥寡孤横丁/百目亀・修羅・菩薩

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【魁の一花】

ぱらぱらと梅の実が降っている。梅雨の時期なんて言葉を聞いたのは生まれ育った故郷を離れてからのことだが、果実としての梅が降るのは流石に可笑しいだろう、と思う。昔に年上の友人から教えられたカスの嘘を思い出す。

「昔はこの季節の温かくなりつつある風に乗って、山の方から木の枝を零れて熟した梅の甘い香りが運ばれてきたんだよ。今は環境が変わったのか、雨が降って掻き消されてしまうようになったが……それでも昔を懐かしがって、この時期を梅雨と呼ぶ者はこの国に多いよ」

その後、店で知り合った可愛い女の子が「もうすぐ梅雨だねぇ」なんて言うから「昔は梅の香りがしたんだってな」って話のタネにしようとしたら、その子に「何それ知らない」という表情をされたことを思い出して若干腹立たしくなってくる。人が文化的に知らねぇ知識に、吐いたところで意味のない嘘をぶち込みやがって。あの爺、いつか泣かしてやるからな。

ふつふつ怒りを沸かせていたが、気を取り直して此処からの行動を考える。これが現実ではなく、俺だけが見ている幻覚の可能性も考慮しなければならない。

「まずは菩薩様に確認だな。万が一にもどっかでヤク摂取して幻覚を見てるんなら解毒剤貰わねぇと」

「その心配はありませんよ。今日も鰥寡孤に家族の平和を壊す悪者はいないし、お前は可笑しな物を食べてはいないし、わたくしだってお前の食べ物に悪戯なんてしないもの。まぁ、わたくしに報告した資料が偽物でなければ、だけれど」

俺が梅の実へ目を奪われている間に自体の掌握に向かっていたのだろう。主たる菩薩様は俺よりも背の高いボディに着替えて、少し上の位置から俺を見下ろす形で隣に立っていた。この人は興味本位ながらに薬品には精通していて、俺はこの人に嘘はつかない。だとすれば、今ここで梅が雨のように降っているのは現実だということだ。

「てぇことは、あとに残るのはサイコパスな科学者が始めた環境実験……或いはトチ狂ったオカルティストの呪術や魔術ってことですか。残念ながら俺達、その手のコトには疎いですからね」

「そう人を悪意的に見つめるのはお前の悪いところだね、太っ腹な発明家が皆に美味しい品種改良の梅を食べてもらおうと、一生懸命に発明機械を動かしているかもしれないよ? それともロマンチストな神様見習いが、梅雨という言葉を聞いて美しいと夢想した結果かしらん? どちらにしても、わたくしには楽しい催しに思えるのだけれど」

「悪意じゃなくたって、責任の所在は確認しなきゃならんでしょ」

「お前って本当お堅いね。わたくしは少なくとも、こんなに綺麗に育った梅なら、お家の中に降ったって文句はないよ」

ほんの少し目を離した隙に、菩薩様が掌に梅の実を転がしている。俺が慌てて叩き落とそうとするも、菩薩様は慣れた手つきで梅の実を大量にある機械の手どうしで持ち帰る。手品でコインを掠め取る要領で俺の前から消えた梅の実に、心配はありながらも此処で狼狽えれば相手の思う壺だと毅然とした態度で苦言を呈す。

「素手で触れずにいてくれますかね。戦場じゃ可愛いぬいぐるみに爆弾をぶち込むだの、敵国に忍び込んで雨水タンクに腐らせた水を混ぜておくだの、そういうのは常套手段なんですよ」

「おやおや、野蛮なこと。それで死ぬのは兵隊さんより、何も教えては貰えない女子供じゃあない?」

「……そうですよ。特に果物なんざカビやら腐敗やら、そうでなくとも生産者も収穫時期も知らん物品は危険です」

主から向けられる「野蛮」に一瞬言葉を詰まらせて、それでも注意はしとかなきゃ、この人は興味半分に拾った梅を食らいかねない。この方や修羅様が梅の青酸に殺されることはないだろうが、菩薩様は修羅様しか眼中にないし、修羅様は菩薩様ほど毒に詳しくない。修羅様が梅を美味いものだと伝えて、仲の良いガキ共が青梅を腹いっぱい食おうとなんてしたらコトだ。俺の心配をよそに、菩薩様は「それなら」と手を叩いて朗らかにスマートフォンを出した。

「耳寄りな情報を得ているの。お前って仕事中は音が聞こえなくなるから、聞いていないかもしれないと思って録音していたの」

流れ出すのは明るい声音で、梅を降らせてしまった謝罪と、梅を集めて渡しに来た相手への謝礼、梅を気に入って料理などに使いたい者への譲渡に関する説明だった。こんな放送を聞いたのならば、俺が空想の悪意とシャドーボクシングをする前に伝えてくれりゃあ良いのに。そんな文句を含んだ目線を向けると、菩薩様はくすくすと笑った。

「ごめんなさいね。お前がわたくし達の為に、思案を巡らせてくれる姿は可愛らしいのだもの」

そんな菩薩様の声を聞きつけたのか、部屋で寝過ごしていたのだろう修羅様が玄関から飛び出してきて、菩薩様に抱き着きながら「綺麗!」と叫んだ。

「姉様、おはよう、これは何? 木の実だとは思うけれど、円くて金色でほんのり赤くて、とっても綺麗」

「修羅、おはよう。これは梅。精霊さんが大事な梅を落としてしまったから、拾ったり届けたりしてほしいのですって。わたくしと修羅はそんなに量を食べないから、拾って食べる分以外はお届けしようと思うのだけれど、修羅はどうしたい?」

「俺は姉様と同じで良いよ」

姉君の手から梅の実を一つ受け取った弟君は、宝石でも扱うみたいに繊細な手つきで掌に梅の実を乗せている。主二人の気持ちが決まっているのならば、部下兼ペットの俺が文句を言う必要はない。

「それじゃあ、梅を運ぶ労働力が必要でしょうね」

「あら、百目亀が頼まれてくれるの?」

「百目亀! 俺もいっぱい梅、見つけてくるからな!」

主達の楽しげな声を聞きながら、俺は手始めに梅の保存方法を、家事が得意な周りの奴らへ確認する為の連絡を向けるのだった。


【鰥寡孤横丁の状態】

・梅が降る様子に驚く一般人はいますが、五文銭から定期的に説明の放送を流しており、さほど混乱にはなっておりません。

・一般人の中には金儲けに梅を集める者や、食べようとして梅を集める者、どちらもおります。自己責任で自由ということで、五文銭からの行動制限は特に無し。五文銭は必要分以外はお返しする予定です。


【それぞれの行動】

百目亀:修羅と菩薩の護衛&荷物持ち。梅拾いには消極的だが、仲の良い人達と会ったら分け合うだろう。

菩薩:修羅と百目亀と一緒に梅拾い。積極的に拾い、百目亀に梅ジャムを作ってもらう算段。

修羅:菩薩と百目亀と一緒に梅拾い。綺麗だから食べる以外にも、いくつか記念に取っておきたいなと思っている。

梅雨日和の人々

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