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北アフリカ大洋 2021-01-12 オリジナル 作品を通報する

洋上漂う御伽伝説

これは自作の世界観について、「誰かが誰かに語る」といった形式で拡張していくだけのシリーズです。ベースとして魔法が存在しますがゲーム的要素の無い世界観となっております。 この世界の娯楽に関する補足…と...

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この作品のシリーズ
酒場で語られる物語

これまで大陸の歴史、文化を語ってきたが海にそれが無かったわけでは無い。 こちらの歴史と同じく大海に夢を馳せ、編み出した独自の技術とともに乗り出した大航海時代があったわけだ。 多くの国が乗り出した時代だからこそ大国史に匹敵する伝説も生まれ、物語として残る話も多い。 今回扱うヴァルカノンのドラゴン島伝説もその一つだ。 実在の有無はともかく、当時を知るにはうってつけと言ってもいいのだろう。 この話はセイナス有数の大貿易港にある港にて歴史学者が語ったものである。 ただ、これから語られる話は物語自体に深く触れるわけでは無いことを予め了承いただきたい。 ー=-=-=-=- マガスやノシスをはじめとして戦記ものの舞台は研究が進んでいる場合があるが、史実関係ばかりが取り上げられるわけでは無い。 最近の学者たちが注目しているのは世界一の海洋域、通称「ヴァルカノン海域帯」と、そこに佇む島々だ。 切っ掛けになった話もそれなりに有名な話だ。 港町の酒場で語られた話が発祥ではあるが不利な環境に放り出された遭難者が血路を切り開いていく物語展開は今の評判を知ればもちろん、舞台物語としても人気が高い。 が、それだけに展開もオチも地方ごとに色々ある。 ただ、学説はここで語られている原話が説としても非常に有力だ。 ‥聞いていくか?わかった、俺の知っている範囲で話そう。 物語の始まりは海軍隊が謎の海流に呑まれて船が転覆したところから始まるんだったな。 話中の主要人物から料理人、老魔導士、戦闘兵がいることは確実とされている。 航海士?乗せずに遠洋航海なんて自殺行為、よっぽどのことが無い限りする奴はおらん。 話を戻すぞ。 地域によって語られている船の種類は違えど、貴族船に学者が乗るのは稀だし海賊だとしても料理人を乗せる程の規模ならピンポイントで話に残るほうが珍しい。 …料理人と言えば、だ。 転覆時に横暴だった料理長が食糧の運び出しを第一に命じ、極限状態にもかかわらず食材や調理のことしか考えていなかったというエピソードは他の展開でも語られているほど有名だな。 なにせプライドが高すぎて自分の料理を不評とした侯爵子息の顔を焦がし、追放されていたと作中で噂され嫌われているくらいだ。 が、その腕は確かなものだったらしい。 どの話でもほとんどのシーンにおいて彼とその部下たちの料理は生き残り達のモチベーションを保つ要因となっていたと聞く。 原話がまさにそうだが、彼らが幸せそうに食事をする光景を見て自分を見直す展開もあるな。 そんな彼の原話における最期はドラゴンが拠点を襲った際、止める部下たちをいつものように殴り倒し振ったこともない槍一つで特攻し焼死したというものだ。 彼の目にはそれが食材として魅力的だったのか、探索組に肉を振舞うと言い出し立ちすくむ部下に肉料理の準備を命じての行動だ。 結果としてドラゴン討伐に大きく貢献した結末もある。 だが奴ほどの信念はあったかはともかく、ああいった傲慢な態度の料理人自体は時代から見ても不思議な話ではない。 上級貴族お付きの料理人は自殺した部下がいるのも珍しい話ではないらしいしな。 …わかっていると思うが、もちろん今はそんなことは無いぜ? ただ、話では彼に限らず多くの人間がその厳しい環境やドラゴンの襲撃に耐え切れず、命を落としたとある。 元々生存しているだけで奇跡と言われているが実は機転次第では環境整備は可能だ。 …伝説ではドラゴンが鳴けば大地が沸騰し海を蒸発させてあらゆるものを引き寄せたとある。 ただ、それが本当ならそこには膨大な量のエネルギーが溜まるはずだ。 実際にこの話が伝説の物語となったときにエネルギーの素材を求めてヴァルカノン海域に乗り出す国が多く出たらしいからな。 混乱期セイナスはそれを元に多くの軍事兵器を‥っとこれは別の話だ。 話を戻そう。 島に莫大なエネルギーが眠っているとすれば航海士はそれを利用し島の熱に対抗できる。 …なぜかって? 先に航海士の居ない遠洋航海は自殺行為と言ったな。 なぜなら当時の航海士に必要なスキルは海の様子を観察し把握するだけでなく、特に遠洋専門は大海のエネルギーを借りて嵐に対抗する魔術を組み、素人には不可能な航海を可能とさせる役割を担う。 当時の対抗方法はまんま嵐を生み出しぶつけて相殺する、なんて荒っぽい方法だったらしい。 彼らがそれを応用し、生存者の生活拠点を整えることも可能であることが分かっている。 そうでもしなかったら地熱にやられて全滅もあり得ただろう。 数日の後に船は燃え尽きたが彼らの術を軸にしてそれぞれが知識を絞り、島を探索する余裕が出るまでには態勢を整えた。 それでも苛酷な環境に変わりはなかったがな。脱出を目標に一同が決心したのかもしれん。 考察・解明されているのは大体この辺りか。後は脱出方法を探り、それを阻むドラゴンを倒して脱出は成功したという筋書きだ。 まぁ、あくまでこれは考証の範囲での説だから話が実存した決定的な証拠ではない。 何、ドラゴンについて何も触れられていないって? そりゃあ物語に語られたような特徴のドラゴンが居たのかを考証することは未だ誰もできちゃいないからさ。 あまつさえ船乗りの心得を語るために作られたとも言われている、というか実際そのように脚色されている節もある。 これだって他の有名な物語と同じく完全な全容の解明はむずかしいのさ。


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