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二次創作 2020-11-21 この作品を通報する
やんだ 2020-11-21 二次創作 作品を通報する

冬の朝に

かけつきさんとでん田さんの設定の設定をお借りしています。 小説家で医者な鬼(かわいい)って面白いなと思って書きました。 イメージは大正時代ぐらいです。 あと炎鬼ちゃんと梅鬼ちゃんは鬼だってバレていな...

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元になったシリーズ
鬼子ちゃん

今日は朝から冷える。 何か大事な用事があったかと思うが、こんな日は布団から出たくない。 いや、出るべきではない。もう少し眠ろう… その時、ガラガラガラ!と玄関の戸を引く音がした。 「炎鬼ちゃんですか?もう起きてお仕事をしていると思いますよー!さあ、どうぞお入り下さい!」 戸口で助手の梅鬼ちゃんが話す声が聞こえてくる。 「どうも朝早くからすみません。しかしどうしても今日は…」 もう一つ、別の声が聞こえてくる。この声は確か新しく僕の担当についた編集者だ。 しばし雑談を交わしたあと、そのまま2つの足音はこちらへ向かって来る。これはまずい! 「炎鬼ちゃん!おはよーございまーす!お客さんですよー!」 「おはようございます先生。来週の締め切りの件ですが…」 梅鬼くんと編集者が戸の外から声をかけてくる。 梅鬼くんめ、編集者にはボクはいないと言っておくれと伝えたはずなのに。 「うん、おはよう。良い朝だね。僕はちょうど医者の方の仕事が片付くところでね。少し待ってくれるかな」 僕は秒で着替えをしながらそう返す。 原稿がどうかって?まだ全く進んでいない! 「やあ、お待たせ」 「あ、炎鬼ちゃん!お仕事おつかれさま!お茶をどうぞー」 僕が応接室に行くと、梅鬼くんがお茶を煎れてくれた。 芳醇な梅の香りがして、とても美味しい。 「先生、それで連載いただいている小説。来週が締め切りですがいかがですか?」 「炎鬼ちゃんの小説、楽しみです!」 「それはだね…あっ、梅鬼くんこのお茶美味しいね。お代わり貰っていいかい?君もどうかな」 「炎鬼先生…なんだかごまかそうとしていませんか?」 「ははっ、まさか…」 そのまさかだ。 「今度の締め切りこそ絶対守って下さいよ!この前みたいに『ウデが折れた』なんて言い訳はだめですからね!片手でも書いてもらいますから!」 流石、若くして女だてらに編集者はやっていない。 (これではどちらが鬼か分からないな……) 僕はなんだか可笑しくて笑みがこぼれる。 「おっと、学校の時間です。それではまた」 シュタッと挨拶をすると、梅鬼くんはお茶を下げて学校に出かけていく。 女学校というのも楽しそうである。次はそういう設定で僕も通ってみようかな。 梅鬼くんのようにセーラー服は似合うだろうか。 「梅鬼ちゃん、行ってらっしゃい」 「行ってらっしゃい梅鬼くん」 梅鬼ちゃんはとにかく人に愛されるところがある。 編集者も梅鬼くんと話すときだけはほがらかだ。 「それで先生、とにかく…ごほっごほっ」 「おっと、大丈夫かい?こじらせたら大変だ。せっかくだからボクが診てあげよう」 「あ、ありがとうございます」 ボクは手を触れながら診断を行う。 カチャカチャカチャ… 「うん、大丈夫そうだ。ただの風邪だね。この薬を飲むと良いよ、たちどころに良くなる」 秘密だが鬼特製の秘薬である。きっとすぐに効くハズだ。 「すみません先生。お代はちゃんとお支払いしますので…」 「3日」 指を3つ数えながら僕は言う。 「え?」 「お代という事で3日だけ待ってくれ」 「~~、ズルいです先生!」 その後、なんやかんやあって2日だけ締め切りをまけてくれた。 さて、これ以上悪化させないためにも小説を書かなくては。 編集者のうしろ姿を思い出しつつ、僕は筆をとる。 今日は冷える。しかし人と関わる事は楽しい。 小説を書いたり人を治して感謝される事はなお一層だ。 締め切りを延ばしてしまった編集者と、それから何かに手を合わせてから、僕は小説を書き始めた。

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