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北アフリカ大洋 2020-11-16 オリジナル 作品を通報する

恨みの傷跡

割とよく語られている剣と魔法の世界を自分なりに練り直したものになります。 同シリーズの他作で少し出した、「混乱期」という時代の闇とも言うべき存在です。しかし混乱期が終わっても生き続け、衝動的に動き続... 続きを読む

この作品のシリーズ
酒場で語られる物語

歴史は時として悲惨な出来事を時代に遺す。時としてそれは後の代まで魔の手を伸ばし、苦しめることもある。或いは二度と起こさぬよう苦の思い出を教訓として敢えて自ら背負い、語り継ごうとするのだろうか。 ここで語る世界には、一体の負の遺産が存在とともに爪痕を刻み続けている。それは種族自体より深い謎を宿しているという。それを追わんとする者が一人、それについて知る者へ問おうとしている。 なお、今回の話は正直救いようが無い。 読み進められないと思ったら素直に引き返すことも考えた方が良いだろう… ー=-=-=-=- ‥‥今日当たったあれは中々に惨い事件だった。 散乱したものから辛うじて殺人だとわかるほど無残に切り刻まれたあれもそうだが、何せそこにいるだけで被害者の抱いていた恐怖の情がひしひしと伝わってくるようだった。 手口から見て恐らくはモルマスの仕業だろう、先輩がそう言っていた。 ただ、被害者も多方面から恨まれていた人物であり、中には聞いただけでも怒りの湧くようなエピソードも俺たちに寄せられていた。 彼が原因の自殺も発生していたくらいだ。 しかし我々ではその件について現状出来ることが無いのも事実。 上も重視するところは彼の件ではなくモルマスが手を下した所にあるからな。 ところで、モルマスについて実を言うとあまり知っていることは無い。 本格的に奴を追うと上が決めたのも最近のことだ、情報は持っていて損は無い。そういうわけだ。話せるか? ―――――― あぁ、そうだな。まぁ、この情報自体は大して秘密にしておく必要性は無い。 最近まで一部の闇界隈、そしてインターマー達の間で共有されていただけのことだ。 まず奴の種族についてだが、目撃情報からインターマー族である、そうお前たちは睨んでいたな。 それは実のところ正解とも間違いとも言える。 そもそもインターマーの中にも細かな分類は可能であり、メジャーな部類が森の番人伝承に始まる、彼ら曰く”マガス系”だ。 ついで有数を誇るのがラウモ系‥だったか?これについては多くを介した口伝によるものだから詳しくは無い。 そういった区分があるとのことだ。結論から言うとモルマスは区分するなら独自系になるらしいな。グループによる発祥を持たない者に対する区分だ。 それも組織規模で制作されたものと推測されている。‥‥それから理解を得る必要もありそうか、用意しておくに越したことはないな。 ‥‥あぁ、魔導兵士(ゴーレム)術で出来た人形に知能を持った者を彼らではそう定義しているようだ。 奴の場合は‥そうだな、成り立ちから説明する必要がある。どういったやつなのかも併せて説明できるはずだ。 事の発端は‥混乱期中期と思われる。 セイナスの歴史物語で議論の的となった出来事があるのは知っているか? …あぁ、レイ家領平定の謎と呼ばれているあの出来事だ。 セイナスが北方攻略をする際、必死に抵抗したとされていたレイ家だが、物語としては討ち滅ぼした描写もなく初めから居なかったことになったまま領地が勢力下に入ったとある。 レイ家と戦った記録が欠けているという説も出たがどこを探しても記録どころか戦った形跡すら残ってない。 むしろ軍以外による闇討ちの証拠は出るんだ。 これがどういうことなのか。 …あぁ、モルマスに関わる話さ。もう少し聞いてくれ。 まずは当時の背景からいこう。レイ家の政治はその時から領民の不評を買っており、しかし反乱を押さえつける程の武力をもっていた彼らに逆らえる存在は無かった。 その力は大国セイナスを押し返せるほどとも聞く。 それも質の悪いことに彼らの主力がマガスも採用したあの魔導兵だ。 マガスは人間兵の負担を減らすようその技術を発展させようとしていた。 レイ家は対照的に自身に都合のいいように兵を教育していたため、魔導兵も人間より優れた殺戮兵として進化させようとしていたと聞く。 いや、実際にそうなったことは確かだ。 民の不満に対し寄り添うこともなく潰す方針だった彼らに不満を抱かないわけもなく、恨みを持つものによる「レイ打倒会」なる集会が密かに出来ていたそうだ。 彼らはレイ家から魔導兵士(ゴーレム)技術を盗み出し、加えて行動原理及び原動力を「恨み」となるようにして一体の魔導兵を作り上げたとある。 「レイ打倒会」についてはセイナス政府蔵書版に記載があるとのことだ。 後に隠れ家を訪れたセイナス兵士が発見したのは会員と思われる者達が、全員地面に座ったまま綺麗に整列し死体となっていた異様な現場だ。 一人の例外も無く背中から剣を貫かれて無抵抗のまま絶命したと思われる。 またその兵士達曰く、『モルマス』というコードネームをつけられた魔導書が発見された。 怨嗟に特化した魔術文が書き連ねてあったらしいが、残念ながら危険物と判断したその連中によってその魔導書は既に灰にされている。 奴の名前の理由は諸説あり、その魔導書から取ったと言い伝えられているが後にモルマス本体がそう名乗ったとも言われている。 少しだけ話を戻すが奴の種族について「インターマーであることは間違いでも正解でもある」、と話したのを覚えているか? モルマスは以上の成り立ちを持つせいか復讐・恨み以外の物事には全く興味を示さない。 そういった判断基準しか持たない奴なのさ。 今や人間と同等の知能を持っているであろうインターマー族にモルマスを含めるかは微妙なところだ。 行動原理も行動パターンも基本はずっと変わってないって噂だ。 っとそうか、容姿もわかった方がいいか? 目撃情報では赤黒い血のへばり付いた剣と盾を持っており、例外無く鎧も返り血らしき模様がある。 何よりその動きに生気が感じられず、負の気を纏っているらしい。 奴が手をかける瞬間の目撃情報もあってな、対象に対し怨み元の声を一通り聞かせてから容赦なく斬りかかるそうだ。 また、奴が恨みを吸収する際にも一度斬る必要があるらしい。 ‥‥長く語りすぎたな。すまん、欲しい情報としてはこんなものでいいか? ――――――――――― あぁ参考になった、むしろ十分すぎる位だ。ありがとうな。 …地面に座ったまま背中から剣で、か。 そうか、森の奥で殺されたアイツも自殺する理由はあっても恨まれる理由は微塵もなかったが、もしかすると…


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